2017.01.29衝動
「バトーは……まだ誰かを抱きたいと思う?」
「バトーは……まだ誰かを抱きたいと思う?」
「どういう意味だ、そりゃ」
「シンプルに言うなら、義体化する前と同じように異性等に対して肉欲の衝動がわくのかと聞いてるのよ」
「……わかないってことは無いが、義体化する前とはやっぱ違ぇよ。よくも悪くもコントロールできちまうし、コントロールしようともしてしまう。それに……」
「それに?」
「戦場で色んなものを見過ぎちまったんだろうな。どっか、どうでもよくなった感覚がある。……女を抱きてぇって若い頃は素直に思えたのになぁ」
「……そう」
「お前は?もうどうでもよくなったか?まだまだお盛んなのか?」
「……答える義理は無いって言いたいけど、私が先に聞いたんだったわね」
「おうよ」
「なんだかムキになってた時期もあったけど、もう今は……正直、虚しく思うときがあるわ。妊娠も出来ないし、妊娠したとて困るだけかもしれないが……羨む気持ちもずっとあった。だけど段々、誰に抱かれても、抱いてても、どうでもよくなるわね。……なぜかはわからないけど」
「……意外だな」
「何が?」
「お前がそんなこと言うのは、らしくねぇだろ?もっとエンジョイすればいいだろに」
「………………」
「このあと、空いてるか?」
「………空いてるわ」
「それなら丁度良い。久々に、抱きてぇって思える。付き合えよ」
「……ふふっ」
「笑うなよ」
「……誘われるのを、期待してた私がいるのよ。だから、笑ったわ。……私もまだ、人間らしい感情が残ってたのね」
「お前が思ってるほど、お前は特別じゃねぇし、凡人でもないさ。……俺もな」
「ああそうね。わかるわ。それは、とてもよく分かる。バトー」
店(バー)から出た二人は自然と体の距離を縮めた。
バトーは素子の腰に腕をまわし、顔を近づける。
何の抵抗も違和感も無く、優しい口付けが交わされた。
「貴方とするのは、ずいぶんと久しぶりだわ」
「そうだな」
「……欲張りになってもいいなら、要求するけど、いいかしら?」
「なんだ?」
「一晩だけ恋人になって。うんと甘く、してよ」
「……ははっ、そりゃいいな。」
「嫌じゃないの?」
「面白いと思っただけさ。……素子も、俺を愛してるって言うんだろ?」
「ええもちろん」
「先に言ってくれよ」
バトーは再び素子に口付けた。
お互いの首に腕を回し、素子はバトーの耳へ唇を寄せる。
雑踏が見るでもなくそんな二人を見て、通り過ぎていく。
見せ付けるように、二人は固く抱き合っていた。

「愛してるわ、バトー」
「俺も、愛してる。……ずっと前から変わらずな」
「……知ってるわ」

<終>
2017/01/29(12:02) | Comment:0
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