6月13日に発行した『背徳』の全文
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「……っあ、……ぁあっ!」
 野崎は考えていた。
 野崎は真剣に、佐倉千代との未来を、現在を、過去を、考えていた。
 考えた結果今日もこうして千代と愛の営みに取り組んでいる。

(※性的な表現が含まれますので18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい)



「……っあ、……ぁあっ!」
 野崎は考えていた。
 野崎は真剣に、佐倉千代との未来を、現在を、過去を、考えていた。
 考えた結果今日もこうして千代と愛の営みに取り組んでいる。
 それも、避妊をしないというリスクを負って、だ。
「……さくら……っ」
 何度味わっても千代の中は野崎の『雄』を包み込んでは締め付けて女体の甘美さをこれでもかと教えてくれるのに、あくせくと汗をかいて体を動かしている野崎の表情はまるで追い詰められているかのようだった。
 原稿の作業をする場(野崎のマンションのリビング)に二人きりで、放課後の夕方に、着ていた制服を最低限だけを脱がして行う行為。
 野崎が腰を突くたびに、黒のニーハイに覆われた千代の足は揺れ、小柄な躰はいっそ痛ましげに見えるほどに野崎の熱い楔とその衝撃を受け止めている。
「ぁ……は……っぁ、や……あぁっ!」
まだ幼さを残る可愛らしい顔立ちが、その大きな紫の瞳が、野崎から与えられる快楽に歪み、潤み、まるで嫌がっているかのようでもあるのに、その挙動は一心に野崎の肉欲を満たすためにと体を捧げて、はしたなく両足を開いているのだ。
 ブラウスのボタンはまだ上から三つしか外されてなくて、桃色のブラジャーに包まれた二つの乳房が、そこにある重さを示すように揺れていた。
 千代の背中と腰の下には柔らかなクッションを敷いてはいるが、それでも体格と体重の差を考えれば、情事中の千代が大変なのは無理もない。
 そうわかっているのに、わかりきっているのに、千代を愛して慈しんで守ってやらなければならない筈の彼氏野崎は、今日もこうして原稿の作業をする前に千代との性行為に没頭している。
 パンティだけを脱がして、自分もベルトを外したズボンを下着だけをずらして、その肉の色を露わにした凶暴な性器を女性器に埋め込んで、出し入れを繰り返している。
 ……ああ、わかっているのだ。
 こんなのは、ただの思春期に有り余る性欲の吐き出し行為なのだと。
 性行為をさせて貰えるなら例え相手が彼女じゃなくても土下座してでも童貞を捨てたいと思う男子と自分は何も変わらないのだと。
 高校三年になって互いに告白も済ませ、友人から恋人へ昇格したと言うのに、未だに野崎はそんな思考回路で、千代の体を只利用しているだけなのではという利己的な感情を己の中に疑っている。
 そして尚悪いのは、もしそうでも構わないという己すらも確かに存在してしまっている事だった。
 ……それがどんな後ろ暗さと背徳感を産み出していくのかすらも理解して。

 スピードに変化をつけながらひたすらに腰を動かし続け、野崎は性器を引き抜かずに迎えた射精を放出させた。千代もびくんびくんと震えて、絶頂へと辿り着いている。
「はぁ……はぁ……っ」
 額から流れた汗が滴り落ちてくる。
 どくんと、心臓が鳴り響く。
 余韻と、何かの切迫感とで動けないでいると、千代が言った。
「のざき、くん……気持ち、よかった?」
 明らかに気遣っている様子に、ハッと意識を戻す。
 中出しした現実と非現実感で回らない頭で、冷静に言葉を吐き出そうとするも、もう誤魔化せない己の歪んだ欲望にごくりと喉を鳴らして、口を開く。
「……あ、ああ気持ち良かったぞ、佐倉。……それから、今日俺は中に出してるんだが……佐倉は、怒るか?」
「そんなの、知ってるよ、野崎くん。さっき、ゴム着けてなかったの、見たから」
「……やっぱり、怒ってるか?」
「怒ってたら、こうして話をしないと思うんだけど」
「………………」
「『生』の方が気持ち良いって話、私も聞いたことあるの」
「……ああ、それはそうだな」
「だから、ゴムしなかったんでしょ?」
「……い、いや……そういうわけじゃ、無いんだが……」
「じゃあ、なんで……」
「……一回、してみたかったんだ」
「中出しを?」
「ああ」
「………ふーん、そっか」
「……すまない」
「なんで謝るの?」
「………………」
「野崎くん、私ね、子供出来ても、堕ろさないよ。だから覚悟は出来てるの」
「…………え?」
「ゴムしてもね、デキちゃうことあるんだって、何度もそういう話聞いたの。友達からも。だから、野崎くんとエッチするようになってから、いつも気にしてた。生理がちゃんと来るかどうか気にしてた。……中に出されても、仕方ないって、さっき思ったの。どうしてかわからないけど」
「……佐倉………」
「野崎くんは、私との子供…………欲しい?」
「……あ、ああ、それは勿論。きっと可愛い子になるだろうし」
「………………」
「佐倉?」
「私は……私も子供欲しいんだけどね、だけど………」
 千代は複雑な表情で言葉を切った。それは今までに一度も見たことの無い彼女の様子で、胸に何かの痛みを感じながら何も動けずに居た。そういう己の情けなさすら頭に浮かばずに。
「野崎くんのことは大好きだけど、私、ちゃんとお嫁さんとか、お母さんとか、出来るのかなって考えるの。……ごめんね、こんなこと言っちゃって」
「……い、いや、そんな……俺だってそういうのはやってみなきゃ分からないから、佐倉だけおかしい訳が無いと思うが……」
「きっと野崎くんは良いお父さんになると思う。料理も家事も上手だし、プロの漫画家だから収入もあるし。……だけど私は……出来ないことも沢山あるし」
「……そっ、そんな風に思う必要は無いぞ!いつも俺の傍にいて、原稿も手伝ってくれて、俺を色んな面から支えてきてくれたじゃないか……!」
「………………」
「…………佐倉?どうしたんだ?」
 なるべく優しく声をかければ暗い表情だった千代の顔がそこでくしゃりと歪んでぽろぽろと涙を零しはじめて、ますますうろたえた野崎が身動ぎした時、小さくなったモノが外れて抜け落ちる。
 同時に注いだ白濁も零れてきて、野崎は胸の奥から迫ってくる何かを、ひたすら前向きの物へ変換しようと必死に思考を巡らせたがその瞬間、『前向き』と『後ろ向き』の相反する感情の両方に挟まれてしまっている己の気持ちに気が付く。
 完全に停止してしまった思考は空っぽへと染め上がり、ふと目の前を見れば身を起こした千代は背を丸めて涙を零し、自分は小さくなったモノを下着へ仕舞いもせずに呆然として、未だに情事の跡を片付けてもいないのだ。
 不意にどう表現したらいいのか分からない苦しさが野崎を襲った。
 引き絞られるような痛みが、胸の痛みが、曖昧だった自分の想いを浮き立たせ言葉として喉から出て行く。……もう、限界だったんだと、気付いて。
「……ごめん佐倉。俺達、別れないか。……いつもエッチばかりで無理させてるみたいだし、俺も……理性効かなくなっちゃってるから」
 俯いていた千代が勢いよく顔をあげた。
 体からも表情からも力が抜けきっている野崎を見て、見つめて、はくはくと口を開いて閉じて、小さな手に拳を握って、眉間に強く皺を寄せる。
 深く、深すぎる心の底から湧き出てくるものが、その感情が、綺麗で美しいものじゃないってわかっていても、キラキラと輝くような恋心そのものの純粋さが、もう、真っ白のままではなくなっていると気付いていても千代は、ただそれだけは、ただそれだけを失いたくないと想う気持ちで、言葉を唇にのせた。
 ……例えその言葉をぶつける相手が、千代を省みずに中出しをしてしまう、千代の彼氏だったとしても。
「のざっ……のざき、くんは…………っ……私が野崎くんを好きなのと同じくらいに、私を好きには、なってくれないん……だよね……っ」
「……………………え?」
「だから……っエッチだって、なんだって私は、野崎くんから好かれたいから、全部、ぜんぶ我慢してきたのに……っ…………中出しだって……もし子供出来ちゃっても……私、産むから……だから、そんなの…………っちゃんと、我慢できるから……っ」
「……佐倉…………」
「私……ずっと、もうずっと野崎くんが好きだった、んだよ……っ……最初はストーカーみたいなことしちゃってたけど……でも告白して気付いて貰えなくても、夢野先生のアシスタントにはなれたし……っ野崎くんと一緒の時間が増えて……すごく増えて、嬉しかったの…………っ……野崎くんも私を好きなんだとやっとわかって、両思いになって……とっても幸せだった……」
 千代は顔をあげずに、野崎を見ずに、喋り続けた。
 ぽろぽろと流れる透明な涙とともに。
「キスも嬉しかったし、エッチも……恥ずかしかったけど……嫌じゃなかったの…………今だって、そうだよ……それなのに……野崎くんは……」
「……ごめん、ごめん佐倉……俺が言い過ぎたんだ。悪かった……」
 いつもと違う雰囲気と、切羽詰まっている千代の様子に野崎なりに何かを感じたのか、虚ろに話し続ける千代の背を撫でてやんわりと抱き寄せてそう言った。
 だが千代は首を横へ振る。ぶんぶんと、大きく。
「そうじゃない……そうじゃないの……っ……」
「…………佐倉……」
「私……私は……ただ、野崎くんを……他の女の子に取られたくない、だけなの……っ私だけの…………私のための野崎くんで居て欲しくて……独占したくて…………だから、別れたくないって思って……でもそれじゃ……野崎くんの気持ちを無視してるのかなって想ったら……私…………」
 そこで千代の言葉は途切れる。力が抜けて項垂れた背は小さく、気配も虚ろで、ただその頭にしている水玉模様のリボンがはっきりと野崎の目に写る。
 千代を知ったのは高一の時で、学校の廊下に展示されている絵画に示された作者の名前だった。
 塗りが丁寧ではみ出しが少なくて、是非自分のアシスタントになって欲しいと思った。
 高二の春に千代から夢野咲子先生のファンだと告白されて、無事にアシスタントとして採用して過ごす時間が沢山出来た。
 気付いたら好きになっていたけれど、高三になってすぐに千代に告白して聞かされたのは千代もずっと自分を好きだったという衝撃の事実だった。
 驚きに驚いたが、結果的には両想いになれたのだから、彼氏彼女として晴れて恋人になることに何ら迷いも躊躇いもなかった。
 ……そう。最初は……最初は何も迷いは無かったのだ。
 何故なのか。いつからなのか。……わからない。
 わからないが、野崎は『佐倉千代と別れた方がいいのかもしれない』という強迫観念のような後ろ暗い気持ちに囚われ続けていた。恋人になってもう七ヶ月が経つと言うのに。

「……佐倉。独占したい気持ちは、佐倉だけじゃないよ……。俺も、そう思ってる。だから……今日、中に出したんだ。本当にごめん………」
 千代は顔をあげる。申し訳なさそうに言う野崎の顔を、その漆黒の瞳を見つめる。
 だが言葉が出てこない。野崎は淡々と、語り続けた。
「………佐倉と恋人になって、色んな所へデートも行ったし、キスも沢山したし、エッチも……いろいろしただろう。全部……俺も幸せだった。だが……佐倉に無理をさせてるんじゃないかと気になっていたんだ。なんだか、俺ばかりが……佐倉から沢山のものを貰って……俺は何も……何も佐倉に与えることが出来てないんじゃないかって……」
 千代と視線を合わせるのも辛かった。
 顔を逸らした野崎は、自分の手が震えているのを知る。
 少女漫画家として多くの漫画を生み出してきたこの手は、恋人を慈しんで愛さなければならない筈のこの手は、今までに、何をしてきたのか、何が出来たのか。
 幸せになる程に募っていく自責の念がいつも野崎を苦しめた。
「子供が欲しかったんじゃないんだ……。佐倉が……俺だけのものでいて欲しいだけなんだ……。変な話ですまないが、俺と付き合うようになって佐倉は前よりももっと……可愛くなって、綺麗になってる。……恋をすると女の子は可愛くなる、というのは本当なんだ。だから……いつか佐倉が俺以外の男に獲られてしまったら嫌だと、思って……そんな理由で、申し訳ない。本当に、すまなかった」
「…………野崎くん………」
 ひたすら正直に内心を暴露した野崎を見つめる千代の瞳に、徐々に光が戻っていた。
 虚ろだった眼差しに、千代の野崎への気持ちが、戻ってきていた。
「野崎くんも……私と同じ、なんだね?私だけの野崎くんでいて欲しいと思ったのと、同じ……。お揃い、なのかな?それって……間違ってる?独占したいと思うのは……間違ってる?」
「……いやそうやって聞かれると……間違ってるとは思わないな。俺が一人で悩んでる時は……そうして佐倉を縛りつけようとしてる事が……悪いことをしてる気がしてた。だから余計に佐倉とエッチしたくなって……もっと俺しか知らない佐倉を知りたくなって止まらなくなってたんだ」
「…………私も……私もね、エッチしてるときの野崎くん、嫌いじゃないよ。……だって、野崎くんの彼女って今までに私しか居なかったから。私しか……エッチしてる野崎くんを、知らないの。声も……表情も……アソコの形も色も……裸の野崎くんと抱き合うのも、私しか、知らないの。……それが嬉しいって、思ってたよ」
「…………本当か?」
「うん」
「……俺と同じだな」
「同じ、だよ」
「…………もう今は11月であと四ヶ月したら俺達高校を卒業するだろう?そしたら……」
「結婚しようよ、野崎くん」
 野崎は瞳を見張る。
 言いたい事を先に言われてしまったという表情で。
「……佐倉…………いいのか?」
「もちろん」
「俺が……俺が、佐倉を独占してもいいのか?佐倉の彼氏って……俺が一人目だろう?」
「そうだよ」
「もしいつか……俺と別れたくなったらどうする?そのときは『離婚』になってしまって……大事(おおごと)になるだろう?」
「それでもいいよ。そうならないって、今は自信を持って思えるから」
「…………ありがとう、佐倉」
「……だからエッチの続き、シよう。私……まだ足りないよ………」
 最後は恥ずかしげに俯いて呟いた千代に、ますます野崎の瞳は見開かれる。
 ごくりと喉を鳴らして、唾を飲む。
 緊張感と切迫感がよみがえり、胸の奥底から、野崎の欲望がまざまざと露出していく。
 『据え膳食わねば男の恥』
 そんな言葉を頭で思い浮かべながら、野崎は震える手で千代の体を抱き寄せた。
 小さくて柔らかで、良い匂いのする、美味しそうな、その躰を。
「……中に出してもいいのか?」
「そうしたいんだよね?だったら……いいよ」
「佐倉………」
「……好きだから。好きな気持ちが、止まらないから、だから……大丈夫。野崎くんも私を……好きでいてくれるなら……私、野崎くんと一緒にいたいの」
「……俺も同じだよ、佐倉」
 もうそこで千代の言葉を聞き続けることが耐え切れず、野崎は千代の唇を己の唇で塞いだ。
 ……無垢で純粋な想いをひたむきに注いでくれる千代に対して、もう返す言葉を持っていなかった。
 啄ばむようにキスを繰り返す。何度味わったかわからない桜色の柔らかで温かい唇に。
 もっと言わなきゃいけないことが沢山あるような気がした。
 もっと……もっと、千代が言ってくれた以上に、千代が野崎へしてくれたこと以上に、何かをしなきゃいけないようが気がした。
 だけどもう野崎は思考回路が回らなかった。
『結婚』の二文字が確約されたことがただ嬉しくて、嬉しすぎて、それ以上は考えられなくなっていた。
 どうしてこんなに好きなのだろう。
 どうしてこんなに愛しいのだろう。
 わからない。わからないけれど、だけど。
 ……今はただ、千代とこうしていたい。裸で、ただ愛し合っていたい。
 ただそれだけを想っていた。



「あっ……ぁ、ああ……っ!!」
 場所を寝室のベッドに移して、千代と野崎の営みは続く。
 すでに御子柴と堀先輩には今日のアシスタントは必要ないとメールを送っておいた。
 時間の制限も無くなった中、野崎は丹念に千代の体を愛撫していく。
 白く輝く肌のどこもかしこをも舐め尽し、触っては撫で、足の指までも口に含んだ。
 聖域に近い太腿の内側が特にお気に入りで、何度も舌先でなぞっては意地悪く責め上げる。
 もう既にほぐれている秘所を、その形を確認するように指でなぞってから、漏れ出る蜜を舌で丁寧に舐め取っていく。
「……んっ……や……っぁ、ああっ」
 くぐもった嬌声は息が詰まり、恥ずかしそうにしながらも確かな甘さを含んでいる。
 次第に固くなっていく体が、紅潮していく肌が、千代の絶頂が近いことを示していた。
 指を二本、奥まで差し入れ、出し入れさせたり、かき回したりする。
 ぬるぬるした肉の壁が、野崎の指を受け入れていた。
 指の責めを止めないまま、皮に包まれた陰核をぺろりと舐めて吸えば、千代の腰が敏感に跳ねる。
「ぁああ……っだめぇ…っ……のざ、きくん……っっ!」
「佐倉、イっていいぞ」
 そう告げてクリトリスを幾度も舌で苛めた。
「ぁ、ああ、ぁああああ……っ!!」
 千代の体がびくびくと震えては、高く引き絞った声とともに膣内が野崎の指を締め付ける。
 更にあふれ出た蜜を潤滑油にして、そのまま指の動きを止めずに速めれば、千代の体は更に固くなり、もはや声も出ずに千代は数十秒イき続けていた。
「……はぁ……はぁっ」
 そして、とっくに準備万端となっていきり立っていた肉棒を、濡れに濡れている秘壷の入口にあてがう。
「佐倉……挿れるぞ?」
 千代はこくりと頷いた。
 野崎は千代の足を担ぐように持ち上げて、ゆっくりと、挿入していく。
 やや平均より大きめのペニスが根元まで中へ呑み込まれていく様子はいつ見ても感動的でまさに女体の神秘を感じさせるが、同時にちりりと湧き上がる罪悪感のような、背徳感のようなものも野崎ははっきりと感じ取りながらもう迷ってはいない己に気がつく。
 中出しの許可を得られるとこんなにも変わるのだろうかと考えながら、野崎は初めて心の底からはっきりと、千代との子供が欲しいと思った。
 ……嗚呼、なんだろう。この幸福感は。
 こんなにも幸せな気持ちで避妊もせずに『生』で、千代とエッチをしている。
 もはや言葉にすら出来ない感情だった。
 熱く柔らかく、千代の中は野崎の敏感な欲棒を包み込み、まるで早く動いて欲しいかのように、うねっている。
 野崎はなるべくゆっくりと腰を引いた。
 ずるると再び姿を露わにした肉棒を、千代の奥へ向かって再び押し込む。
「……っぁ……あっ!」
 腰を引いては再び打ち付ける。
 肌と肌があたる音と、いやらしい水音が響いていた。
 野崎は無心で腰を動かし続けた。
 やがてぶるりと震えが下半身から背に向かって走り、
「千代……っ……出すぞっ!」
 叫びながら、射精をしていた。
「ぁ……の、ざきく、ん……っっ!」
 二人とも震えて、注がれた精液が千代の胎を満たしていく。
「はぁ……はぁっ……」
 何も思考できない頭で、野崎は息を整えてから千代の体をひっくり返し、桃のような尻を高く持ち上げさせた。
 ただ追い求めるままに、自らの全てがそう欲求しているままに、後ろから再び千代を犯す為に。
「あ……あ、ぁああ……っ!?」 
 硬さを失っていない剛直を奥まで挿入して、ぐりぐりと奥を苛めてから、何度も何度も出し入れさせる。
 どちらのものかもわからなくなった汁が繋がった箇所から千代の太腿へと滴り落ちていく。
 まるで獣のように野崎は千代を犯し続けた。
『好きな女の子を孕ませたい』という素直な欲求に抗うことをせずに。
 千代の様子すら、窺がうことをせずに。
「あ、あぁっ……のざ、きくん……っっ激し、すぎるよ……っぉ!」
 だが苦しげではあったが、千代の声には確かに悦楽が含まれていた。
 その声に少しだけ冷静さを戻した野崎は動きを遅め、後ろから手を伸ばして千代の乳房に触れる。
 やわやわと揉みしだいて、壊してしまわないようにと優しく手を動かし、指先でその頂きを摘んで擦れば、千代は敏感に声をあげる。
「あ……っぁ、ああ……やっ……ぁ!」
「……駄目じゃないだろう?佐倉は、乳首も、こうされるの好きだろう?」
 朦朧とした頭で野崎は言葉を吐き出し、千代の乳首を指で責め続ける。
 中が潤みを増していき、千代が感じているのを知りながら、一度猛りを引き抜いて、ベッドへ腰を下ろした自分の膝の上へ向かい合わせに千代を座らせた。
 再び挿入してから、千代の乳頭を口に含んでちゅうちゅうと吸う。
「ぁ……あ、あああ……っ!!」
 すっかり硬くなった実を飴を舐める様に舌で転がして、軽く噛んで、もう片方も同じように刺激する。
「や……っぁ、もぅ……っんっぁ!」
 千代が身を捩り、身動ぎする度にその腰も揺れて、野崎をやんわりと刺激している。
 散々イジめてから口を離し、野崎は下から千代を突き上げた。
 幾度も突き上げて、千代の尻を掴んで、前後に、横に、上下に揺さぶる。
「んんっあ……ぁ、ああ……ああああっ!!」
 千代は野崎の首に細い腕を絡み付けて懸命にしがみつく。
 やがて絶頂に辿り着いた千代の中へと、たっぷりと本日三度目の白濁液を流し込んだ。


 さすがに疲労が見えてきた野崎は、ただ千代を押し倒して、深くキスをしていた。
「……ふっ……ぅ……んっっ……」 
 舌を絡めて、執拗に唾液を混ぜて、千代の口腔内を探り続ける。
 時折、汗にまみれた千代の体も手で撫でては労わるようにしながらも、未だに先程の熱の余韻をくすぶらせていた。
 ようやく口を離して、起き上がった野崎は、千代の乳房に手を伸ばす。
 女体への渇望や興味は十代前半から普通にありながらも、実際に見て触れて舐めたことがあるのは千代の乳房だけなのだ。
 頬、耳朶、首筋、鎖骨、腹、腰のくびれにも触れて、最後にぽつりと言った。
「………あともう一回、出来るか?」
 千代は重い瞼を上げる。
 野崎を見上げて、ただこくりと頷いた。
 それを見るや否や、再び勃起していた自身を千代の秘裂へと挿入していく。
 流し込まれた精子と千代の蜜でどろどろに蕩けた其処に、容赦なく最奥まで貫いて、再びの腰の律動を始める。
 まるで波が寄せるように、引いてはまた押し寄せる海の波のように、穏やかに、野崎は千代へと欲望に塗れた楔を穿ち続けた。
「……ぁ、……あ……っぁ」
 不意に回すように腰を動かせば、膣壁も野崎に合わせて形を変えていく。
 野崎をもっと奥へ誘うように、引き抜こうとすればまるで離すまいとするかのように、野崎の雄と肉欲を魅了し続けて止まない。
「……佐倉……さくら…………」
 佐倉千代と媾合う為に産まれて来たかのように野崎は律動を止めずに、四度目の射精に辿り着くまでの時間を引き延ばすように、緩慢に責め続ける。
 汗が、汗が滴り落ちている。
 すでにどちらも服は一糸もまとっていなかった。
 野崎が突くたびに千代は声を漏らし、息をつめて、体を震わせて、耐え続ける。
「佐倉……佐倉……好きだ…………俺も……好きだから……っだから……」
「……あ、……っぁ……私も………っあ」
「……俺との子供……作ろう…………っ」
「……うんっ……うん…………っ!」
 首を大きく縦に振った千代は、腕で顔を覆った。
 その頬が何かに濡れているのを見てから、野崎は目を瞑って、粘膜から感じ取る快感へと意識を集中させる。
 あと、あともう少し。
 重い疲労と眠気の中、腹の奥から何かが痺れていき、下半身へと移っていく。
 あとほんの少しとわかった時に、野崎は指の腹で千代のクリトリスを押して、擦って、刺激を与える。
「……っあ、っらめ……っぇ、あ、ぁあああっっ!!」
 溜まりきっていたであろう快感が膨れて弾けて、一際大きく震えて千代はイった。
 最後にもう何度か強く腰を打ち付けて、野崎も精を解き放つ。
 深い、深い快楽に、全身が満たされているのを感じながら。


「……佐倉、大丈夫か?すまない、無理をさせてしまって……」
 やがて身を起こした野崎に問いかけられ、瞳を開けた千代は、首を横へ振った。
「大丈夫。……野崎くん、今日……いつもより、気持ちよかったよ」
「………え?そうなのか?」 
 意外だったのか、呆けた顔をする野崎に、千代は微かに微笑む。
「うん。……だから、また『生』で、シようね……?」
「…………いいのか?」
「もう何度も出しちゃったのに、今更だよ」
「ああ、そうだな………」
 余韻と熱が引いてはいなかったが、激しさや苦しさは無い、穏やかで静かなものへと変化してもいた。
 まるで心地よくて暖かい泥に包まれたような疲労感だった。
 暫く沈黙が落ちてからぽつりと千代が呟く。
「……野崎くん、私のどこが、一番好き?」
「…………わからないな」
 正直に答えてしまったがそれがマズいとも思わなかった。
 もう性器は繋げていなかったが、心のどこかが深く、まだ千代と繋がっている気がしていた。
「………私もね、どこが一番かはわからないの。でも………」
 千代は野崎の手に触れる。ベッドに横たわったまま、野崎の腕から手を優しく撫でた。
「野崎くんに触ってるときも、触られてるときも……幸せだから…………だから、きっと……」
 千代は瞳を閉じる。
 千代の言葉を待っている野崎の気配と、その体温を充分に感じながら。
「……私たち、幸せになれるよ」
 野崎は瞠目して、ただやんわりと千代を抱きしめた。
 
 
 迷いも躊躇いも不安も恐怖も期待も喜びも楽しみも好意も愛情も独占も嫉妬も、自分だけが抱いているのではなく、千代も同じ気持ちを抱いているのだと理解でき、気持ちのずっと奥まで繋がる事が出来た今ならば、千代が何を言いたいのかを分からなければならないと、思った。
 本当はずっと分かっていた筈の、千代から送られる真っ直ぐで無垢な好意から逃げずに、それを全部受け止めなければならないと、ようやくそう思った。
 ……それがどれだけ最低な男になる事だとしても、そうしない事の方がより最低なのだから。

                    【終】







《あとがき》
「大好きな君へ後日談」の続きの中でやりたかったことを、今話でつめこんでみました。のざちよは体格差が美味しく、千代ちゃんも野崎くんも初々しくてピュアで鈍くて可愛くて、何か大事なものを思い起こさせてくれる二人だと思います。
後半のエロに気合を入れてみました。
楽しんでいただけたら幸いに思います。
ありがとうございました。

2017/01/29(11:51) | Comment:0
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