のざちよエロ4本目。少しだけハードになってますが基本はラブラブいちゃいちゃ

(※性的表現が含まれますので、18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい)
思い出せば、私と野崎くんとのプレイが『アブノーマル』なものへと変化していったのはいつの日が始まりだったんだろう。


はじめは世のカップルが致すように、ごく普通にその行為をしていたように思う。

お互いに裸で抱き合えたらそれだけで嬉しくて、野崎くんの体温も匂いも私と全然違う体格も肌の硬さもすべてが新鮮で、私はただ彼にされるがままに喘いでは彼の情欲を素直に受け止めていた。

キスされるだけで恥ずかしいのに、見つめられるだけでどこかに隠れてしまいたい気持ちなのに、何も布で隠していない私の裸を余すことなくじろじろ見られ、指や舌で体のあちこちを探られては私の快感をこれでもかと煽っていく彼は、さらに下半身に硬くしている私の体にはついていないソレで私の一番奥深くのところへ辿り着いて、私が全く知らなかった陶酔と恍惚の波の激しさをしつこいくらいに教えてくれた。

大人になるってこういうことなんだろうか。
恋をするというのは、こんなにも汗をかいて運動することだったんだろうか。

はじめは新鮮だったその行為も次第に慣れてくると、相手が大好きな男の子であったとしても、不意に頭の片隅で冷静になってる自分がいることに気がつく。

無我夢中に通り過ぎていく快感に身を委ねるだけの期間が終わり、ある日、私は生理の日というわけでもなかったのに、私を押し倒そうとした彼を、無意識に拒んでしまった。

本気で嫌だったわけではなくて、自分でもなぜ今彼の体を押しのけたのかわからず、驚いた顔をした彼に、私はこう言った。

「……きょ、今日はそういう気分じゃないんだけど、ダメ……かな?」

彼は目をパチクリとさせてから、私が言った意味を理解したのか、『何も駄目じゃないから今日はやめるよ。もしかして今までも無理してたのか?……すまない、気づけなくて』と律儀に謝罪までしてくれた。
それを聞いた私は目から涙があふれていて、『さ、佐倉?どうした?そんなに我慢してたのか!?すまない本当に、どう詫びたらいいのか……そうだ、代わりに何か佐倉が好きなものを買いに行こう。服とかバッグとか、何か今欲しいものないのか?』となんとかして私の機嫌を取ろうとする彼に、私はふるふると首を横に振って、自分から彼の体にしがみついた。

「……ちがう。違うの……私、何も欲しいものないよ。野崎くんがいれば、それでいい。こうして、エッチなことを何もしないで、野崎くんと同じベッドで寝れたらそれでいいの……」

『……佐倉…』と私の名を呼んだ彼は、そっと私の頭を撫でてその日はそのまま一緒に寝てくれた。


それから何週間も、彼は私の体を求める事をしなかった。
キスすらもほぼ無くて、それが彼に無理をさせていたのか、無理をしてでも彼は私に無理をさせたことを後悔していたのか、私には分からない。

でもそうして二ヶ月以上が過ぎた時、私はその事に気がついてしまう。

自慰をしなければおさまらないほどに、自分の体の奥深くが疼いていることを。
本当はもっと早くからその疼きに気がついていたのに、それでもその疼きを無視してでも、私は彼との平穏な日々を過ごすほうを選んでいた。
我慢できずにいつも彼にされたことを思い出しながら、なんとか自分の指でオーガズムまで達した時に、何かが大きく違うと気がつく。
何が違うのか考える必要もないほど、私は、今すぐに彼に抱かれてその大きなモノで満たされて、突かれては揺さぶられて、激しくも優しい、全身を駆け巡っていく甘い陶酔に身も心も浸したがっていた自分の欲望と本心を、中途半端に得てしまった快感の波でまざまざと知ることとなった。


迷う余裕すら無くなった私は彼の家へ行き、以前から試したいと思いながらも躊躇っていたフェラチオをすることを彼に提案すると、いろんな意味で驚いた彼が私を見つめて、
「……そう言ってくれるのは嬉しいんだが、もし俺の為に佐倉が無理してるんだとしたら、俺はやっぱり佐倉を抱けない」
そうきっぱりと言う彼は、数ヶ月前まで私の体を好きなだけ貪っていた頃とは別人のようで、私は返す言葉を見つけられずに、ただ体の疼きと彼へと湧き上がった強い苛立ちで、気づけば自分のほうから彼を押し倒していた。

驚く彼の唇を自分の唇で塞ぎ、私を押しのけようとする彼の服を乱暴に脱がせて、理由を喋る代わりに彼のモノを口へと含む。
正直に言うなら何も美味しくなくて、どうしてこんなことをしてるのかと不意に我に返って目尻に涙が滲みながらも、次第に口の中で硬く大きくなっていくソレと、荒く息を吐いては体を震わせる彼の反応に押されて、私は手と口でソレを愛撫し続けた。
「……佐倉っ……もう、離していいから……っ!」
切羽詰った声と脈打つソレに口を離せば、白くどろりとした液体が私の顔にかかって、慌てふためいた彼が謝りながら私の顔を拭いてくれた。
呆然としている私にシャワーを浴びるようにすすめる彼を無視して、私は思い出したように服を脱いでから、彼へと跨って言った。
「……私ね。嘘ついてたって、今日気づいたの。だからね、お願いだから……私を抱いて?」
それでも硬直している彼に、私は駄目押しと、心からの本心で彼の耳元へ囁いた。
「……私の指じゃ、全然足りなかったの。野崎くんのじゃないと駄目だって、わかったから……だから、どうしても、欲しい。野崎くんが欲しいよ……っ」
恥ずかしさと、ようやく本音を言えた安堵で彼の胸に縋りつけば、彼は私を抱きしめ返してこう言った。
「俺も佐倉が欲しかったんだ。……でも、今ここで我慢するのを止めたら、俺は佐倉を優しく抱けないと思う。自分勝手にしか抱けなくて、佐倉が泣いて嫌がっても止められなかったら、俺はもっと後悔すると思う。……それでもいいのか?今度こそ佐倉は俺を嫌いになるんじゃないのか?」
私は泣き止んで、一瞬でも迷った自分を振り払ってから、笑顔で彼に言った。
「嫌いになんか、ならないよ。だって私、野崎くんが好きだから。好きで、ずっと好きで、やっと両思いになったんだよ。キスもハグもエッチなこともはじめは恥ずかしくて、でも段々慣れてきてたのに、今度は私がしたくない時に私はそれを野崎くんに言えなくて、言えなかったから私はあの時野崎くんを拒んだの。でもそれからずっと野崎くんとエッチなことしなくなってどうしてかわからないけど、私、本当は寂しかった。寂しくて、野崎くんの体に触りたくて、キスして欲しくて、こうして抱きしめてほしくて、もっと私を見て欲しいって思ったの……。ごめんね私、我が儘だよね。……こんな私で嫌いになった?」
彼の顔を見ずに呟けば、彼は私の顎に手を添えて上向かせてから、触れるだけのキスを落とす。
「……嫌いになるわけがないから。あと、すまないが、もう我慢できない」
そうして彼は私の唇を貪って、舌を絡めて、胸もアソコも触って、急ぐように私の中へソレを押し入れた。
私は久しぶりに感じる太さと熱に声を上げて、幾度も奥を突かれて、気づけば自分のほうから腰を揺らしていたことを指摘されても、彼の体にしがみ付いて、頭の中がちかちかするほどの眩い快感を、心からの歓喜で受け止めた。

一度、二度、と抱いても彼は私の体を離さなかった。
三度目のあとに『今度はセーラー服を着てやってみないか?』と聞かれて、私はあれ程嫌がっていたその衣装を着て彼とエッチすることをすんなりと承諾した。
カメラに撮るわけじゃない。写真に残るわけじゃないから、と自分でも心で言い訳していたけれど、本当は気がついていたんだと思う。

いつの間にか、私の方こそが、野崎くんとのセックスに溺れていたことを。


[newpage]


数日後に彼のマンションでセーラー服を着れば、彼はとても嬉しそうに
「やっぱり撮影しては駄目か?」
とカメラを持って聞くので、私は笑顔で断った。
少し落ち込みながらも、私をベッドへ押し倒す彼は楽しそうで、
服を脱がさずにどんどん事を進めて、下着すらも脱がさずにずらしただけでソレを挿入してから、彼は言った。
「次は目隠しして縛るのと、鏡を見ながらするのとどっちがいい?」
と。
私は少し驚いてから、どっちでもいいよと答えると、彼は、
「じゃあ両方一緒にやろう」
と笑顔で提案して、意味がわかってない私の体を膝の上に乗せて
下からソレで突き上げる。
そうしてお互いに腰を動かして達してから、
「次の時までにさっきの用意しておくから、楽しみにしててくれ」
と言われ、イったばかりで頭の働かない私は彼にキスをねだりながら、何も考えずに頷いた。


[newpage]


その一週間後に、彼にマンションへ呼ばれて行けば、
まだその日は昼間だったのに寝室で彼に服を脱がされて、アイマスクで目隠しをされてから、綿ロープというもので私は後ろ手に両手首を縛られた。
さらに二の腕ごと上半身をぐるりと二周、ちょうど胸の下と上で挟むように縛られて、私は戸惑いながらもされるままとなり、作業を終えた彼から、
「今、どういう気持ちがするんだ?」
と聞かれて、
「何も見えないし、手も動かせないし……その、ちょっと怖いって言うか、不安になる感じがするよ……」
正直に答えれば、膝から太ももにかけてそっと撫でられて、首筋に温かい息をかけられて、胸を揉まれてからその先端を優しく摘まれる。
「……んっぁ……あっ!」
自分の声すらやけに大きく聞こえるのを感じながら与えられる刺激に甘く喘いでいると、彼は舌と唇でその先端を弄んで、びくびく震える私の下半身に手で触れて、指先でいやらしくソコをなぞる。
「……いつもより濡れてるな。見えないほうが感じるのか?」
「そっ、んなの、わからない……よ……ぉっ」
つぷりと中へ差し込まれた指が、私の弱い所を探っては幾度も壁を擦ってかき回して、入口をしつこく責めては、親指で私が一番敏感なクリトリスを優しく撫でた。
「……あ、ああぁっ!」
「佐倉、ここ好きだろう?このまま指がいいのか?それとも舐めて欲しいのか?」
「あ、っん……やぁっ…っ!」
首を振る私に構わず彼は指を離し、代わりに尖らせた舌先でソコを押し、舌べら全体で舐めあげては唇で包んで吸い上げる。
私の腰は跳ねあがり、電気のように流れていく快感の強烈さに全身を震わせて、彼がそれをやめてくれるまで、私は息も絶え絶えに身悶え続けた。
彼がその肉棒を私へ入れたときにはもうすっかり私の中は蕩けきっていて、彼の腰が打ち付けられるたびにいやらしい水音が響くのを、研ぎ澄まされた聴覚で聞く。
時折角度を変えながら、私の足を肩へ担いだり、折りたたんで押し付けたりしながら彼は腰を使い続けて、太く硬いもので私の中をどこまでも責め立てては、浅く入れた状態で動かずに、不意に私と長いキスをする。
混じり合った唾液を難なく飲み込んで、再開された律動に私が背をそらせると、
「……そういえば、鏡の事を忘れてたな。佐倉、見てみるか?」
と思い出したように囁かれて、私が「何を?」と聞く前に、彼は私を抱きあげ後ろ向きにその膝の上へ座らせる。
腕と上半身が縛られているせいでバランスを崩しそうになった私の体を逞しい腕で支えて、彼は私の目隠しを取り外した。
不意に眩しくなった視界に目を瞬かせてから、焦点があった時に、私の目の前に大きな鏡が壁に立て掛けられているのがわかって、更にそこに写っている『私』の姿に私は大きく目を見開かせる。
「ほら……とても綺麗だろう?綿ロープを赤色にしてよかった。佐倉の白い肌にとても似合ってる」
彼は耳元で囁いて、私の胸の上下のロープを指でなぞる。
その様子も鏡に写っているのを見ながら、私の視線が最も釘付けになったのは、大きく開かされた足の間のその部分だった。
中から溢れさせた液で淫靡に光っては、桃色の肉が何かを待ち望むように微かに震えている。
息を呑んでいる私の体を彼が持ち上げて、天を向いているその赤黒い肉棒の先端へと私のいやらしい膣穴をあてがう。
「こうして佐倉の体を下ろすと、ずぶずぶと入っていくから、よく見てて」
彼の言うとおり、鏡の中で、私のソコは彼のモノをたやすく根元まで呑み込んでいった。
映像としてはグロテスクなのに私の中で脈打つその熱は確かに私の心を満たしていて、私は彼に揺さぶられるままに息を漏らして声をあげて、鏡に写る私の顔を眺める。
眉間に皺を寄せながらも頬を朱に染めて与えられる快感に歓喜しているその表情は、私が今までに見たことがない私の雌(メス)としての顔だった。
「……佐倉のこの顔を見ていると、俺の中のどこかが満たされるんだ。そうして次はもっと、いやらしいことをしてやりたいと思う。……佐倉にもわかるか?」
彼の言葉を、朦朧としている私ははっきりと聞き取って、それでも反射的に鏡から目を逸らしてから言った。
「……わかる、と思うけど……っ……でも、私、この顔、やだよ……っぉ」
「どうして?」
「わから、ない……っでも……もう鏡はやめて……ぁっ!」
「じゃあ鏡見なくていいから、俺を見てて。もうイきたいんだろう?もっと激しく、イかせてあげるから……」
「……え?」
私が疑問に思う間もなく彼は強引に私に口付けて、同時に、私を下から突き上げる。
喉の奥で苦しい声を漏らす私に構わず舌を絡ませ、彼の手は繋がる場所の傍の私のクリトリスをさり気なく弄んだ。
「ふっ……っんんぅ、んんんっ……!!」
私の悲鳴は彼の口の中でかき消され、下からも上からも責め立てられて、びくびくと痙攣した私を彼はもっと肉茎で追いつめてから、不意に強く彼を締め付けた私の中へと、避妊具越しに白い濁りを吐き出した。
彼が私から口を離しても、震えが止まらない私の中は幾度も収縮しては、お腹の奥から入口へかけて彼をしめ付け続ける。
体も思考も蕩けきって荒く息をつく私の体から彼はロープを外して、用が済んだ避妊具を捨ててから、ベッドへと項垂れた私の頬へと優しく口付けた。

「……佐倉、今日はまた一段と良かったぞ。やっぱりこういうアブノーマルなプレイのほうが佐倉も感じるんだろう?」
「………え……」
重い瞼をあげて彼を見れば、彼は何かを発見したように満足気な顔をしていた。
私は少し躊躇ってから彼から目をそらして、それでも私をやんわりと抱きしめた彼の背に腕を回して呟いた。
「……そう、かもしれない。私って、普通じゃ……ないのかな?」
「そんなことないぞ.。俺だって今日みたいなプレイが好きだし、もっとこれからも色々やってみたいんだ。佐倉と一緒に……」
「……野崎くん………」
「……佐倉、嫌じゃないよな?」
私に聞く彼はどこか弱気にも見えて、私はその時に、体で感じる快感とはまた違う、心の奥のほうから深く満たされていく感情を、初めて知った。
「嫌じゃ、ないよ。だから野崎くん……私に甘えていいんだよ?」
「……え?」
私が言った意味を掴めなかったのか、不思議そうに声をあげた彼に、私はそれまで言えなかったことをすらすらと口にしていた。
「今日みたいにもっと、私に、いろいろやらせていいの。野崎くんの好きなようにしていいの。そうしたら私、野崎くんにとって一人前の彼女だよね?野崎くんを満足させられて、野崎くんがしたいことを私の体で出来るんだから、私、野崎くんにとって必要なんだよね?必要な彼女なんだよね?」
「……佐倉……?」
彼は目を丸くしてから体を離し、その時の私の顔をまじまじと見つめてから、言った。
「……佐倉がそんな風に言わなくていいんだ。いや違う。頼むから言わないでくれ。俺の彼女は佐倉だけだし、佐倉以外に彼女を作ったりなんてしない。浮気だって考えたことないし、俺は佐倉しか抱きたいと思わないんだから」
「………本当に?」
聞き返す私に、彼はすぐに答える。
「当たり前だろう。それから、佐倉はとっくに立派に俺の彼女だろう?いつも俺の話を聞いてくれて、漫画のベタだって手伝ってくれるし、俺がネタに詰まったときはいつも一緒に考えてくれるだろう。それだってどれだけ俺が助かってるか佐倉は知らないのか?今日みたいなことをしなかったとしても、佐倉は俺にとって絶対に必要なんだ。だからそんな風に卑下しないで欲しい。俺のためにも、わかってくれないか?」
「………野崎くん……」
真剣な表情で懇々と私を諭す彼に、私は呆然と彼の顔を見上げた。
あふれた涙が頬を伝い落ちていくのを感じながら、その熱さに、自分が知らないうちに冷えきって震えていたその感情が溶けていくのを感じる。
「……私、ごめんなさい。……野崎くんを信じてなかったの。ううんそうじゃなくて……信じているのに、こんなに信じて、大好きで、いつも野崎くんから好かれたくて仕方なくて、一緒にいたら楽しくて、片思いだった時を思い出したら比べられないくらいに幸せなのに、幸せすぎて信じられなくて、私は……野崎くんにいつかフられる夢を見るの。朝になると、そんな夢を見たことも忘れてて、野崎くんに会っては、私に笑って話しかける野崎くんがもっと欲しくて、何度エッチなことしても足りなくて、でもエッチだけでも足りなくて、私ずっと、頭がおかしくなってた……」
「………………」
彼は口を挟むことなく、私の涙を指でぬぐって、混乱した言葉を吐き出す私の話を聞いていた。
「……私、今の私を好きになれないのかな。野崎くんとエッチなことする私を、心の中のもう一人の私が嘲笑っている気がするの。『体で繋ぎ止めたところで、いくら淫乱になってみせたところで、そんなので喜ぶような男は、私の全てを好きになってはくれないんだ』って。……野崎くんを馬鹿にしたいわけじゃないの。野崎くんを否定したいんじゃなくて、私が自分に自信を持てないから、私が、私の全部を野崎くんに好かれているのかわからないから、エッチばかりしてると、本当はそれだって嬉しいのに、その嬉しい気持ちと同じくらいに不安が膨らんで……。ごめんね、私、何言ってるかわからないよね。本当にごめんね……」
私はもう彼の顔を見ることができなくて、俯く私の腕を引っ張った彼へと倒れこんで、その温もりに縋りついてはそのまま泣き続けた。
私の髪を優しく梳く指を感じながら、やがて泣き疲れて静かになった私へ、彼は淡々と言った。
「……俺、佐倉の……いや、千代の全部を知らなかった。今千代がその気持ちを言ってくれて、やっと千代がどういう女の子なのかわかった気がした。だから千代も、その心の中のもう一人の千代を好きになればいいんじゃないか。すぐには好きになれなくても、いつか好きになれるかもしれない。肯定できなくても、否定しないで済む日が来るかもしれないから」
私の下の名前を初めて呼んだ彼は、幾度もそう繰り返して、唖然と顔をあげた私を真剣に見つめ返す。
「……千代って名前、可愛いなってずっと思っていたんだ。でもいつ呼び名を変えるのか切っ掛けが掴めなくて今日まで来てしまったから……。千代って呼ばれるの、イヤじゃないか?」
真顔で言う彼はやはり天然なのだろうか。
私は震える唇で喉の奥から声をしぼりだして、くしゃりと泣きそうに顔を歪めた。
「……ううん。嫌じゃ、ないよ。そうじゃなくて、嬉しい。すごく、嬉しいよ……梅太郎くん」
私も彼と同じ理由でずっと呼べなかったその名を口にした。
言ってしまえば難なく言えるのに、何故か恥ずかしさがわいて、私は裸の体で俯く。
「……もう一回呼んでくれ」
「梅太郎くん。……うめたろうくん、梅太郎くん……っ!」
「……うん。やっぱり嬉しいな。ありがとう、千代」
囁く彼の声はとびきりに甘くて、私は照れ笑いをしてから彼へと抱きつく。
「……私たちって、ちょっと遅れてるよね。下の名前も呼んでなかったのに、なんかもうイロイロイロしちゃったし……」
あんなことやこんなことを思い出しては顔を赤くする私に、彼も同意するように頷いた。
「そうだな。でも結果オーライでいいんじゃないか。俺に言わせれば、千代が可愛すぎるからこうなったんだし」
「……え?そうなの!?」
「ああ。今だから言うけど、俺、あまりセックスに興味なかったんだ。不能ではなかったと思うんだが、友人の話に聞くよりはオナニーも淡白だし回数も少なかった。別に困ることじゃないから深く考えてなかったんだが、千代に出会って、自分は千代を好きなんだと自覚してから、急に我慢できないくらいに性欲が強くなったんだ。だから、少し前に千代とセックスできなかった間、その頃を思い出してなんだか懐かしくて、このまま一生出来なかったらどうしようって思いながらも、なんだか楽しかった気がする。……すまない、俺もかなり変だな……」
「……え。あ、そんなに変じゃない、と思うけど……ど、どうなのかな……?」
落ち込むように俯いた彼に、私は混乱しながらもなんとかフォローしようとするけど、男性のそういう生理現象に詳しいわけじゃないからそれ以上言えなくて、私が言葉を探して首をひねっていると、急に彼は私の両肩に手を置いて言った。
「だからってわけではないんだが……その、俺も千代に言いたかったことがあって、それは……」
「……え?」
「俺以外の男とは絶対に、こういうことをしないで欲しいんだ。こんなに可愛い千代を他の男に見られたらと思うと、耐えられない……」
「…え、ええ!?」
本当に苦しそうな顔で俯いた彼に、私は驚くしかなくて、うろたえている内に彼が続ける。
「……千代は自覚してないと思うが、子供っぽいとか幼いとか小さいとか、そういうのだけが千代の姿じゃないんだ。……俺もなんて説明したらいいのかわからないが」
さらに驚いた私は目を見開いて、彼の言葉をようやく頭で理解できそうになった時、熱く頬が火照っていくのを感じる。
「………もしかして、私が大人の女性になれてる……ってこと?」
「うーん。そういうのともまた違うと言うか……こう、色っぽいという表現が一番近いんだが、その色っぽいとも違うと言うか……」
「……え、ええええ!?」
理解しようとした私の思考を否定され、私が声をあげると、彼自身も真剣に考えながら、たどたどしく言葉を重ねていく。
「あー……だから、なんというか、『ギャップ』が一番的確な表現になるんじゃないか。子供っぽさと、その色っぽい表情と、それでいて俺を拒んでいるのか受け入れているのかよくわからない複雑な表情をするそれが、俺はすごい好きで……。その表情を見てると胸が苦しくなるのに、でももっとそういう顔を見せて欲しくなって……。だからさっき千代がもう一人の千代に嘲笑われているという話をした時に、俺の中で何か腑に落ちたものがあって……そういう千代も含めて俺は好きなんだと今日気がついたんだ。だから、千代も気にすることはないんじゃないかと言いたくて……」
「………野崎くん……じゃなくて、梅太郎くんて、なんだか……凄いね。私そこまで考えてなかったよ……」
まだ慣れない呼び名を訂正してから、これ以上なくわかりやすく説明してくれた彼に私は感嘆と感動を覚えてから、その言葉にほくほくと胸が温まっていくのを感じる。
「……私、なんで私が梅太郎くんを好きになったのかって理由をいつも単純に考えていたけど、私もまだ本当はよくわかってないんだと、思う。でもね今日……」
私は梅太郎くんの大きな手をそっと手にとって、手の平を広げてから彼の手の大きさと比べるように、自分の小さな手を合わせた。
「梅太郎くんはこんなに手も大きくて、私の手はこんなに小さくて……。私ね、今日もっと梅太郎くんのことを知って、私のことも教えてくれて、すごく胸がときめいたの。私……また、貴方に新しい恋をしたのかな?」
「……新しい恋?」
「うん。私、高校一年から二年までは梅太郎くんのストーカーをしてたのに、梅太郎くんが実家を離れて一人暮らしで、さらに少女漫画の連載をしているプロの漫画家なんだってこと、全然知らなかった。他にも、絵が上手いことも、漫画に対しては一生懸命なのに背景は描けなくて箱を置いちゃって堀先輩に怒られるのも、突き指が嫌なだけでバスケしたがらないのも、家事全般得意で料理が上手なのも、全部、全部が意外で、私が想像していた梅太郎くんの姿と全然違っていたのに、私、どうしてわからないのに、そういう梅太郎くんも含めて好きで、『好き』の気持ちが減ったことが今までに一度もなかったの」
声もなく目を瞠る彼に、私は今日始めてのその笑顔で、彼に言った。
「だからね、私をもう一度、梅太郎くんの彼女にしてください。昨日までの私と、今日からの私の両方を、梅太郎くんなら受け入れてくれて、私の嫌な部分や汚い部分を知っても、ずっと、ずっと変わらずに私の事を好きでいてくれるんだって、やっと私、わかったから」
胸に広がっていく温かな気持ちはすっかり私の全身に広がって、それを少しでも彼に伝えたくて、伝えたくて、知って欲しくて、私は精一杯に微笑んで、彼へ二度目の告白をした。
彼は呆然と私を見つめ返してから、不意に顔をそらして、口元に手を当てて呟いた。
「……どうしよう。もう、なんか……千代が可愛すぎて、俺は今死ぬんじゃないかな……」
そう言う彼の顔は真っ赤に染まっていて、私も照れたように笑ってから、彼を押し倒す。
彼が何か言う前にその唇に触れるだけのキスをしてから、私は彼の背中に腕を回して、力いっぱいに抱きついた。
「……梅太郎くん、大好き……っ!」

『俺も……いや、俺のほうがもっと大好きだから!』と何故か張り合ってきた彼の声に私は笑って答えながら、その大きな手に頭を撫でられて、預けきった体に裸の彼の体温が染みて、私は目を閉じて、彼との幸せな未来を何も迷わず思い描けるようになった自分の心と、もう一人の自分に、そっと心の中だけで感謝の言葉を送った。
2014/10/30(05:14) | Comment:0 | TrackBack:0
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