続きです。

ゼロリナですが、ガウリナ要素も強いと思います
「リナ、ちょっといいか?」
声をかけられて、リナはゆっくりと顔を上げた。
三限目の講義が終わった、ちょうど昼食休みが始まる時間。
別の教室で講義を受けていたはずの、金髪碧眼の男が、リナの居る教室の入口に立っていた。
リナは教科書ノートを鞄にしまい、席から立つ。
「話があるんだ。時間、空いてるだろ?」
ガウリイの傍へ寄ると、心配そうな瞳で見下ろされる。
とっさに目をそらしたリナは、頷いて、ガウリイの背を追って教室を出た。






「ゼロスと付き合ってるって話は本当なのか?」
彼の質問は直球だった。
大学のキャンパスはやたらと広い。
心地よい木陰に、さわやかな風が吹いて、リナとガウリイの髪を揺らしていった。
「……誰から聞いたの?」
ガウリイは悲しそうな顔をした。
「本当なのか?」
リナは口をつぐむ。
質問に質問で返されても、ガウリイはリナから目をそらさない。
「……どうして、オレに言わなかったんだ?」
「……言うって、何を?」
白々しい態度を貫くリナに、ガウリイの表情が揺らいだ。
そこに苛立ちよりも悲しさが増すのは、リナには耐えがたいが、この場を駆け去る勇気もまた無かった。
「オレとの婚約が嫌なら、どうしてそう言わなかったんだ。オレのことが嫌いになったなら、どうしてそう言わなかったって聞いてるんだよ……!!」
リナは、泣きそうになっている自分に気がついた。
今日この日が来ることを、リナは知っていた。
いつかガウリイに問いつめられるであろうことを、責められて、なじられるであろうことを、リナは知っていた。
知っていたのに、こんなにも苦しくて辛い。
ガウリイの苦しそうな顔を見ることが。
「……あたし、ゼロスと付き合っていないわ。でも、もう、ガウリイの婚約者でもないと、思う。それはあたしのせいで、ガウリイのせいじゃない。だから――」
「ふざけるなっ!!」
ガウリイの一喝に、リナは震える。
堪えていた涙が目尻から落ちて、頬をすべる。
彼の拳が木の幹を叩き、こずえに止まっていた小鳥が数羽飛んでいった。
「それは、オレを嫌いになったってことだろう!?オレがリナに嫌われて、どうしてそれがオレのせいじゃないんだ。リナがオレを嫌いになって、どうしてそれがリナのせいなんだ。オレはそんなに安い男なのか!?全部リナのせいにするくらいに、安い男だと思われてるのか!?」
ガウリイは本気で怒っていた。
リナはこんな彼を見たことがなかった。
幼馴染で、中学も高校も一緒で、大学まで同じところに通っている。
婚約したのは、大学に入る前だった。
『気が早いんじゃないか』と諭そうとする周りの声を、ガウリイもリナも聞こうとはしなかった。
それくらいに深い仲だったのだ。
それを、そんな二人の仲を、裏切ったのは――。

「そのぐらいにしておけ。ガウリイ」
突然割って入った声に、ガウリイもリナも振り向いた。
立っていたのは鋭い目つきに銀髪の男だった。
「ゼルガディス……」
「お前さんがたの揉め事に興味はないが、少しは場所を選んだほうがいいんじゃないか?それともキャンパス中の噂にでもなりたいのか?」
ゼルガディスはゆっくりと歩いて、ガウリイを諫めるように彼の肩に手を置いた。
「違う、オレは……っ」
ふと見れば、リナの傍には黒髪の少女が立っていた。
快活な雰囲気に、今は戸惑うような表情を浮かべて。
「ガウリイさん、リナさん。あの、私、なんて言ったらいいかわからないんですけど、ひとつだけわかるのは、喧嘩してるお二人は見たくないってことです。でも、私が口出ししていいのかどうかって考えたら、たぶん私は関係ないと思います。でも、それでも、黙って見てるのはできなくて……」
「アメリア……」
素直な性格のままに言葉を発して、泣きそうに俯いた少女に、リナは少女の名をつぶやく。
ゼルガディスはガウリイの肩をつかんだまま、リナたちへ言う。
「とにかくこの場は一度終えたほうがいい。ガウリイもリナももっと冷静に――」
「違うわ」
だが、リナはゼルガディスの声を遮った。
拳を固く握りながら、肩を震わせて。
「あたしは冷静よ。ゼルガディスとアメリアの気持ちは嬉しいけど、でも、あんたたちには関係ない。はっきり言うなら余計なお世話よ」
「リナさん…!?」
「リナ!!」
声をあげるゼルガディスとアメリアを無視して、リナはガウリイを見据える。
もはや怒りではなく、戸惑うような目をしている彼を。
「あたしがガウリイを嫌いになったのかと、さっき聞いたわね?違うわ。違うけど、あたしはガウリイとは結婚しない。もう決めたの。それが全部よ。わかった?」
「……リナ、お前、めちゃくちゃなこと言ってるってわかってるのか?」
ガウリイの声は震えていた。
ゼルガディスもアメリアも固唾を飲んで、成り行きを見守っていた。
「わかってるわよ。わかってる。でももう遅いの。あたしがガウリイを裏切ったの。ガウリイはあたしに裏切られたの。ただ、それだけよ」
リナは一息に言い切った。
もう誰も口を開こうとしない。
ゼルガディスとアメリアと、ガウリイの視線が、痛いほどリナに注がれている。
リナは気丈に唇を引き結んで、三人の視線を受け止めた。

不意に鐘が鳴った。
昼休みが終えることを告げる鐘の音だった。
長い長い沈黙のあと、ぽつりと、ガウリイが言った。
「……オレは、それでもリナが好きだ。リナに裏切られても、リナを嫌いにはなれない。……そんなオレを馬鹿だと思うか?」
リナは今までに何度、その真摯な蒼い瞳に、心を揺らされてきたのだろう。
この期に及んでこの台詞が吐けるからこそ、ガウリイはガウリイだった。
リナは耐え切れないように顔を背けた。
ぽたりと、薄紅の頬を雫がすべり落ちる。
「……あんたはっ本当に、大馬鹿者よ……っ!!」
この場から去ろうと、リナは身をひるがえした。
だがすぐに立ち止まる。
いつの間にかリナの後方に立っていた人物に、ゼルガディス、アメリアも目を見張った。
「……あんた、今日は学校に来ないって……」
「なんとなくリナさんが心配でしたので、来てみたんですけど、僕の直感も当たってたみたいですねぇ」
呆然とつぶやくリナに、男はにっこりと笑った。

紺青の髪を肩でそろえ、本心を常に覆い隠すような笑顔の仮面。
ガウリイとゼルガディスと同学年でもあり、リナと同じ学科でもある男、ゼロスが、そこに立っていた。








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コメントお待ちしてます(´∀`*)
2014/05/26(05:55) | Comment:0 | TrackBack:0
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