それは月が綺麗な夜だった。
九兵衛が友人の妙の家へと遊びに行き、夜遅くに帰ってきた日の晩の出来事だった。
彼女の世話係兼護衛である一人の男が、帰りが遅かったことを諫める言を述べながら、九兵衛の部屋を訪れた。
九兵衛は鬱陶しそうに返事をしながら、彼に背を向けたとき、後ろから手を引っ張られた。
驚いて振り向けば、両手を彼の手に捕まれて、そのまま畳へと押し倒された。
いきなり何をするんだ、という言葉は彼に通用しなかった。
手を縛られて、体を押さえつけられて、次に彼が触れたのは、九兵衛の腰の帯だった。
そこでようやく九兵衛も気がつく。
これから何が始まるのか。
これから自分は、彼に何をされるのか。
ただ耳に聞こえる、引き裂くように脱がされていく服の衣擦れと、ひやりと空気に触れた肌を、なぞっていく生温かいもの。
耳元で聞こえる吐息。
それらは人ではなく、獣のそれだった。
人が人でなくなったときの、哀しくておぞましい、男と女の終着点――。

(※性的な表現が含まれますので、18才未満の方の閲覧はご遠慮下さい)
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2011/09/30(01:11) | Comment:1 | TrackBack:0